麻雀のルールの簡略化 ~知的ゲームとして普及させるために~ ③カン・後半
前回はカンの使用頻度の低さ・ルールの複雑さを考えました。
今回は後半、カンが生む「例外」について見ていきましょう。
カンは多くの「例外」を生む
カンツは3枚でなく4枚で構成される面子です。またそれにより、カンをすると手牌の枚数が増えます。
私自身、初心者の頃はカンについて悩まされました。
「麻雀のアガリ形は 3枚×4+2枚×1 なのになぜ4枚セットなのか」
「カンで手牌が増えてしまうけど大丈夫なのか」
正直今でも、わざわざ4枚での面子を「例外として」認める理由が理解できません。
とにかく、カンが初心者にとって疑問に思われやすいことは確かであると思えます。
カンの例外性はこれだけに留まりません。
- カンした直後のツモは「例外的に」嶺上牌から取ります。その結果「例外的に」王牌がずれます。
- 暗カンは、面前なのに牌を晒す唯一の「例外」です。
- 加カンは、自分が既に鳴いた面子を唯一変化させる「例外」です。
- 槍槓は、他家の手牌(にしようとした牌)でアガれる「例外的な」役です。
- リーチ後の暗カンは、アガリ牌でない牌をツモ切りしない「例外」です。
- 通常暗カンでロンはされませんが、国士に限り「例外的に」認めるというローカルルールがあります。
主要なものだけでもこれだけあるのです。
カンによる例外的要素は、それだけ麻雀初心者の負担を増やすことにつながります。
実際私の周りでも、慣れていない人による王牌のずらし忘れが度々起こっています。
カンの例外的要素が、初心者に戸惑いを与えているのです。
カンが好きな人へ
ここまで散々カンを悪く書いてきましたが、カンが「楽しい」「好きだ」という意見も十分理解できます。
実際打点の上昇や、新ドラをめくるワクワク感がたまらないという人も少なくないでしょう。
しかし、見てきた通りカンに関しては数多くの煩雑な要素があり、それらはカンというシステムをなくすだけで解決できるため、そちらのメリットの方が勝ると考えます。
また戦術的な面で、カンがないと高打点をアガり辛いという意見もあるでしょう。
ですが、カンは麻雀における数多くの運要素の一つでしかありません。
配牌からツモ、アガれるかどうか、裏が乗るかどうか…
それらはすべて運です。
運要素が一つ減った位ではそうそうバランスは崩れません。
そもそもカン自体の出現率が低いので、平均打点もそこまで落ちないでしょう。
終わりに
いかがだったでしょうか。
カンの必要性について、今一度考える機会を読者の皆さんに与えられたのなら幸いです。
副次的な効果ですが、カンをなくすことで覚える役も4つ減らすことができます。
次回は「符計算の必要性」についてです。
麻雀のルールの簡略化 ~知的ゲームとして普及させるために~ ②カン・前半
前回は、私の考えた麻雀の簡略化ルールを提言しました。
今回からそのルールについて具体的に解説していきます。
今回は「カン」についてです。
長くなってしまったので前後半に分けます。
カンは「なくてもよい要素」
新ルールでは「カンなし」としましたが、これは主に次のような理由によります。
- 使用頻度が高くない
- 関連するルールが複雑
- 「例外的な要素」を多く生み出してしまう
順に見ていきましょう。
カンの使用頻度は「2半荘に1回」程度
カンを実戦で使う機会は、それ程多くありません。
今回カンの1局あたりの平均使用率について調べたのですが、残念ながら信頼できるデータは得られませんでした。
ただ、複数の鳳凰民のデータを見ると、おおむね5~6%に収まっていました。
どの程度この数字を信用できるかは疑問です。
しかし、カンが行われるには、同じ牌を自力で最低3枚揃える必要がある上、明槓は裏が乗らないので敬遠されがちです。
また通常テンパイに近くないと、カンは行われません。
以上を考えると、少なくとも使用率が10%を超えるようなことはないでしょう。
仮にカン使用率を5%、1半荘あたり10局とすると、2半荘に1回しか行われないことになります。卓全体ですら1半荘に2回程度です。
これが7.5%だったとしても、一人当たり2半荘で1.5回程度です。
リーチ、チー、ポンに比べて著しく低いと言えますね。
カン絡みのルールは複雑
先に言っておきますが、麻雀に正しいルールはありません。
ローカルルールや細かな違いが山のようにあるからこそ、打つ人とルールを事前に確認し、共有しておくことが大切です。
特にリアルで打つ場合、細かいルールを確認しなかったために、解釈の差でトラブルになることがよくあります。
一応ネットでも、細かいルールを覚えていなかったために損することはあり得ます。
但し、ルールの全てについて一々確認していたのではキリがなく、現実的ではありません。
そのために「簡略化」が必要になってくる訳です。
これらを踏まえた上で、カン絡みで問題になりやすいルールをいくつか見てみましょう。
- 明カンのドラ
明カンのドラについては、打牌後にめくるルールがメジャーと思います。
しかしその捨牌に対し、いつ鳴きが解禁されるのかという解釈は人によってまちまちです。
麻雀には「発声優先」という原則がありますから、例えば
「カンドラがめくられるのを待ってからポンしようとしたら先にチーされた」
などの問題が起こり得る訳です。
また新ドラによって鳴き判断が変わる可能性も軽視できません。
それが4索であれば2~6索はドラ面子に絡みます。
他にも「嶺上開花、槍槓、捨て牌でのロンのそれぞれについて新ドラは乗るのか」
など人によって解釈が異なるであろう問題があり、結局その場において声の大きい人の意見が優先されがちです。
- リーチ後にカンできるケースは?
「特定の場合に限り認められる」ルールが最もメジャーかと思われます。そのルールは色々な形で言われますが、ここでは単純かつ正確に「暗刻としてしか使えない同種牌3枚と、同じ牌をツモって来た時のみカンできる」と表現します。
例)3335666m 789s 北北北
33+35+666 とも 333+5+666 とも 333+56+66とも見られるため、ツモ3mや6mでカンできない。もちろんツモ北はカンできる。
777888999m 1123p
777+888+999 とも 789が3組 とも見られるためツモ7,8,9mいずれもカンできない。
リーチ後のカンにおける問題は、「カンできる条件が複雑で間違えやすい」ことです。
特に前者の牌姿で、待ちが変わらないからといって3mでカンしてしまうという経験は多くの人にあると思います。
これは前述の「暗刻としてしか使えない所しかカンできない」という認識が広まっておらず、単に「待ちの変わるカンはNG」と覚えてしまう、あるいは曖昧なままで打ってしまっているからと考えられます。
場所によってルールが違うというのもあります。
例えば、天鳳では上2つの牌姿で6m以外は問題なくカンできます。
年配者の中には普段「リーチ後のカンは全部禁止」というルールで打つ人もいます。
取り決めが複雑であるために、開始前にはまず確認されず、トラブルになりやすいです。
ここでは列挙に留めますが、他にも
- 国士は暗カンでロンできるか
- 大明カンの責任払いはアリか
- 嶺上開花の時2符つくか
- 四カン流れはどの時点で流局か
- 大明カンによる大三元・大四喜の責任払いを認めるか
- 加カン→暗カンとした場合それぞれの新ドラはいつ乗るのか
- 四カンツの責任払いを認めるか
など、とにかく場所によってまちまちなルールが多いです。
このようにカンはトラブルの温床になり得ます。
2半荘に1回しか使わないことのために、これだけ多くの取り決めを覚えて、4人でルールを入念に確認するというのはどう考えても非効率でしょう。
前半はここまで。
次回は 3.例外的な要素 について見ていきます。
麻雀のルールの簡略化 ~知的ゲームとして普及させるために~ ①
様々な場所で楽しまれている麻雀。
しかしその一方で、麻雀と聞くと「不健全」「ギャンブル性がある」「難しそう」とマイナスのイメージを持つ人も珍しくありません。
本シリーズでは、麻雀が一般層へ「知的ゲーム」として普及することを最終的なゴールに据え、麻雀のルールをより簡略化させることを考えます。
ここで注意があります。
単に麻雀をシンプルにするだけなら、それこそドンジャラで事足りる訳です。
あくまで麻雀としての面白さ、ゲーム性も同時に保てるようにします。
初回は新ルールの提言に留め、従来の麻雀の問題点や改正の具体的な理由については次回から掘り下げる形とします。
方針としては、
- なくてもよい要素はなくす
- 無駄に複雑にしない
- 従来の麻雀を知っている人でも戸惑わずに打てる
この三点を意識しました。
簡略化麻雀のルール
・カンなし
・符計算なし。アガリ点は表1で「基本アガリ点」を出した後、表2を適用。
従来でいう30符のアガリ点に近いです。
表1 基本アガリ点
ハン数 |
得点 |
1 |
1000 |
2 |
2000 |
3 |
4000 |
4~5 |
8000 |
6~7 |
12000 |
8~10 |
18000 |
11~12 |
24000 |
13~ |
32000 |
32000×(成立した役満の数) |
表2 アガリ方による得点の違い
子のロン |
表1の点数を放銃者が払う |
親のロン |
表1の1.5倍の点数を放銃者が払う |
子のツモ |
親は表1の点数の半分、子2人はそれぞれ1/4を払う |
親のツモ |
子3人がそれぞれ表1の点数の半分を払う |
なお従来の100点棒を250点棒として扱います。
アガった人は場にあったリーチ棒を全て獲得できます。
(もしくは不採用)
・フリテンは現物のみ。つまり、自分が切った種類の牌そのものではロンアガリできないが、他全ての牌でロンアガリができます。リーチ後についても同様。また同巡フリテンなし。但し赤5と赤くない5は同種とみなします。
・25000点開始
・終局時1000点→1ptと換算
・順位点 2位 +5pt 3位 -15pt 4位 -25pt
2位~4位の小数点以下は四捨五入。3人のptの和の符号を逆転させたものが1位のptとなります。(従来の30000点返しとほぼ同義)
・終局時に同点の場合東1局の席順で順位を決定(東→南→西→北)
・アリアリ
・テンパイ連荘、ノーテンで親流れ
・積み棒なし
・西入なし
・トビ終了あり。箱下清算あり。0点続行。1000点未満でリーチ不可
・ラス親トップはアガリやめ、テンパイやめする必要があります
・役なしではアガれない(常に1ハン縛り)
・途中流局(九種九牌/四家リーチ/四風連打)なし
・ダブロン・トリロンあり。リーチ棒は上家取り。親が含まれれば連荘。
・パオなし
採用役一覧
1ハン |
|
2ハン |
|
3ハン |
|
6ハン |
清一色▲ |
☆:面前限定 ▲:鳴くと1ハン減少 ※:これのみではアガれない
「ゲームの種類」って考えたこと、ありますか?②
前回は、二人の完全情報ゲームと多人数向けバラエティゲームについて扱いました。
今回は一人向けのゲームについて考えてみましょう。
一人向けゲーム:RPG
例としてまず考えられるのはRPGです。
最近こそ他人との協力や対戦といった要素が充実しているものも多いですが、
ストーリー進行という幹の部分は、本質的に一人でするものと考えられます。
RPGのゲーム性として、その世界を楽しむことがあります。
そもそもRPGとは、ロールプレイングゲーム (Roll Playing Game) の略で、
役目、役割を演じるゲームという意味です。
主人公になり切って、あたかも自分がその世界にいるような没入感、ワクワク感を楽しめるのです。
一人向けゲーム:作業系
特定の目的のために何らかの作業を行うものです。
例えば、ソリティアは特定の規則に従ってトランプカードを動かして、最終的に数字の小さい順にすべてのカードを置くことが目的のゲームです。
パソコンでやったことのある人も多いのではないでしょうか。
他にもアルカノイド、ゼビウスなどゲーセンに置かれるゲームも作業系です。
目的は最終面のクリアですが、さらに高度になるとスコアアタックの概念も出てきます。
つまり、クリア自体が容易になると、ハイスコアの更新に関心が向くようになる、ということです。
多くのソーシャルゲームも一人用です。
この手のゲームの特徴として、明確な目的が決められておらず、人によって自由に目的を持ってプレイできることが挙げられます。
特定の面までのクリアや、周りで一番のスコアを獲ること、キャラクターを限界まで強く育成することなど楽しみ方は多種多様です。
基本料金が無料であるため間口が広く、また極めたい人は課金するようなシステムが整備されています。
おわりに
いかがだったでしょうか?
次回はアクション系のゲームについて考えてみたいと思います。
「ゲームの種類」って考えたこと、ありますか?①
ゲームの種類
世の中にはたくさんのゲームがあります。
Nintendo Switchのような電子ゲームから、将棋・囲碁など歴史のあるもの、トランプのように気軽に遊べるもの…
今回はそれらを、その「ゲーム性」という視点から分類することを考えてみます。
二人零和有限確定完全情報ゲーム
いきなり長ったらしい単語が出てきましたね。笑
これは簡単に言えば、運要素のない二人でやるゲームのことです。
例としては三目並べ、オセロ、将棋、囲碁などがあります。
ゲーム性は次のようになっています。
- 運が絡まないため、実力のある人が非常に勝ちやすい
- 努力による伸びしろが大きい
- 情報が全て公開されているため、ゲーム中に何かを覚える必要がない、または薄い
特に重要な特徴は、理論上は完全な先読みが可能であることです。
つまり、最強のプレイヤー同士が対戦すると何と毎回必ず同じ結果になるんです!
驚きですね。
もちろん、考えられるパターン数が膨大であるため、解析が済んでいないものも多々あります。
先程の例では、最後まで研究されているのは三目並べだけです。
コンピュータをもってしても完全な先読みというのは難しいものなのです。
多人数向けバラエティ
さっきの二人なんちゃらゲームと違って、「複数人でプレイする」「運の絡む」ゲームです。
また1位~ビリまで、(時に同率を含む)順位がつくものとします。
例としては麻雀、人生ゲーム、モノポリー、ウノなどです。
他にもほとんどのトランプゲームや、巷で売られているボードゲームの多くがそうです。
ではゲーム性はどうでしょう。
- 特定の相手と協力するのが有効なことがある
- 初心者でも上級者に勝てることがある
- 見えない情報がある
順に見ていきましょう。
1.相手との協力については、大富豪の「都落ち」が分かりやすいでしょう。
大富豪を次のトップにさせないことで、他の全員が得できます。
麻雀の「差し込み」も、自分と差し込み先が結果的に得できます。
これは先程の二人のゲームにはなかった特徴です。
なぜなら、二人なら自分の得=相手の損であり、逆もまた然りだからです。
2.理由は二つあります。
一つ目は運が絡むことです。いかに上級者と言えど運の悪さはどうにもなりません。
二つ目は、多人数であるため1.のように協力されたり、集中攻撃されることがあるからです。
初心者が上級者に勝てる可能性があることにより、ゲームがパーティー性を持つようになります。
即ち、初心者でもたまには勝てるので楽しめ、上級者の方は対初心者向けの戦術を見出す面白さが生まれるのです。
その反面、デメリットとして正確な実力が測りづらいことがあります。
3.これは手札や山札などのことです。
特定の誰かにしか(あるいは誰にも)見えない情報があることで、他の人はその人の動きや場の状況などからそれを推測する、という要素が生まれます。
これも先程の二人なんちゃらではなかったことです。
おわりに
いかがだったでしょうか?
長くなってしまったのでいったん切ります。
次回はもっと他の種類のゲームについて考えてみます。